秘密保護法案 国民監視社会が出現 裁判も機能しない恐れ

安倍内閣が早期成立を狙う秘密保護法案を阻止しようと、埼玉県の個人・団体でつくる「秘密保護法の制定を許さない埼玉の会」が活動を強めています。同会代表で、自由法曹団埼玉支部長でもある柳重雄弁護士(64)に聞きました。(埼玉県・川嶋猛)

 

「制定を許さない埼玉の会」代表
 柳 重雄弁護士に聞く

弁護士の立場から見ると、法案には「特定秘密」をチェックする体制が無い。秘密の取得、秘密の漏えい行為について犯罪構成要件(犯罪行為の類型)が非常にあいまいで、どこまでが犯罪でどこから犯罪にならないのかが全然、明確でない。何気ない会話やメール、フェイスブックで交換したことが、いきなり犯罪になる可能性があります。密告の奨励もあります。警察による監視社会になる要素を持っています。

もう一つの問題が、適正評価制度です。秘密に接することができる人をチェックし、その情報を国家が握るわけです。国民監視、国民選別の社会になる心配があります。

 

人権の根幹揺るがす

どの側面から見ても、民主主義と国民の基本的人権の根幹を揺るがす重大な問題を持っているということをぜひ知ってほしい。

裁判所が罪に問われた人を救済できるかというと、裁判が機能しない可能性があります。何が秘密かが裁判官にさえ明らかにされないので、行政機関の長が秘密を指定したという形式的な事項だけで有罪判決が下される恐れがあります。司法でも国民の知る権利や報道の自由が守れない、行政・警察が優位な社会、権力を握るものが圧倒的に有利な社会になるのではないでしょうか。

法案の背景に、憲法9条を変え、集団的自衛権を解禁して、海外で戦争する国に変える動きがあることは明らかです。知らないうちに戦争が推進されていたということになりかねません。

法案への国民の関心は広がりつつありますが、とくに一般の人、若い人に反対の声をあげてもらうためには、どうやって訴えるかが大切です。

 

学習・宣伝積極的に

自由法曹団では、自民党の憲法改正草案をはじめとした憲法改悪の動きに対して、大学習運動を展開しています。県内百数十カ所で団員が講師になって学習会を開いています。参加者の層を広げるために、若手の弁護士による講師団を組織することも考えています。弁護士会とも連携し、秘密保護法案の学習も、この延長線で大いにやっていきたい。

「埼玉の会」では、先月30日に県庁前でデモ行進しましたが、各地での宣伝、署名など市民に見える行動を今後も積極的にやっていこうと考えています。(赤旗2013年11月3日付より)