9月に入ってから埼玉、千葉(2日)、栃木(4日)、埼玉、群馬(16日)と首都圏各県で竜巻が立て続けに発生し、家屋損壊などの被害が相次いでいます。被災住民への支援策の現状と課題について、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に聞きました。(聞き手・山本健二)
塩川衆院議員に聞く/実態にかみ合った支援策必要
―現地調査を重ね、被害と被災者の実態はいかがですか。
この間、埼玉県越谷市と松伏町、千葉県野田市(3日)、埼玉県熊谷市(17日)を現地調査し、竜巻被害に遭われた方の声を聞き取りました。また、紙智子参院議員も栃木県鹿沼市(9日)、矢板市(10日)を視察しています。突風で家屋の屋根がはがれ、窓ガラスが割れる。その後の大雨で2次被害が生じるなど、総合的に大きな被害が生まれる事態になっています。
越谷市にある飲食店は2階に穴が開き、その後の大雨で1階部分の店舗が被害を受けて、「商売を再開しようにもできない」と語っていました。
農家の方も、田んぼにがれきが散乱したため、「稲刈りの時期なのに、機械を入れられなくなった」と話していました。
熊谷市では被災者に雨よけのブルーシートが配布されましたが、高齢の被災者からは「屋根に張るところまでお願いできないか」という声が上がりました。がれきの撤去、仮住まいの確保、住宅再建など日を追うごとに新たな要望が出てきます。
問題点は
―被災住民への支援策の問題点は。
国や自治体の被災者支援制度を最大限活用しようという姿勢が弱いということです。住宅応急修理や仮設住宅が可能となる災害救助法は「多数が生命、身体に危害を受ける恐れが生じた場合」は被災戸数にかかわらず県知事の判断で適応できます。でも、今回の竜巻では、栃木県矢板市、鹿沼市、千葉県野田市など適応されていません。
被災者生活再建支援法は、「10世帯以上の全壊被害が発生した市町村」などを適応対象としています。昨年5月、茨城と栃木の両県で竜巻被害が発生したときは、全壊棟数が6棟だった真岡市など栃木県の自治体には適応されず、適応されたつくば市との不均衡が生じました。今回も野田市には適応されません。
この件も私は国会で取り上げ、すべての被災住宅を支援するよう求めました(2012年6月5日、衆院社会保障・税特別委員会)。当時の防衛担当副大臣も「前向きに検討したい」と答弁しましたが、国は依然として改善していません。
こうした国の制度の問題点は、県独自の支援制度にも影響を与えています。栃木県は昨年度、自然災害で全壊などした家屋の建て替えを支援する独自の制度を創設しました。しかし、災害救助法の適用を前提とした制度のため、今回の被災者への適用が難しい状況です。
解決の道
―どのように問題を解決すべきでしょう。
竜巻は台風や地震などと違い被災する地域は局地的ですが、屋根が吹き飛ぶなど被災者にとって甚大な被害になるという特殊性があります。そうした竜巻被害の実態にかみ合った支援策の拡充が必要だと思います。
災害救助法や被災者生活再建支援法など国の被災者支援制度について、「国と地方の役割分担」論を打ち破ることが必要です。これは個々の被災者にとっては深刻重大な被害であっても国が行う災害対策は大規模災害に限定し、小規模な災害については、自治体まかせにするという立場です。結果として、自治体の取り組みにも消極的になります。
しかし、改正災害対策基本法はその基本理念として「被災者援護」を明確にしました。東日本大震災での被災者と国民のたたかいが反映しています。すべての被災者の生活再建に国が責任を負う立場で、支援制度の改善をはかっていきたいと思います。
また、現行の支援制度を自治体が最大限に活用するように働きかけるとともに、被災者の実情を踏まえた自治体独自の支援制度の創設も重要です。
このような改善策を国に要望し、国会でただしていくつもりです。(赤旗2013年9月24日付より)