埼玉県上尾市で市立図書館の移転計画をめぐって、市民団体「上尾の図書館を考える会」がタウンミーティング(地域別住民集会)を開いています。会は、移転計画の是非を問う住民投票条例制定を求める直接請求署名をこの秋に開始する予定で、タウンミーティングを通じて市民に計画の問題点を知らせ、図書館のあり方を考えてもらおうと取り組んでいます。
市民の声聞かず
島村穰(みのる)市長は2014年、JR上尾駅東口から徒歩約5分の図書館本館を、市北東部の上平公園の隣に移転させる計画を発表しました。さらに15年に青少年センターとの「複合施設」にする計画に変更し、19年度に新規オープンしようとしています。しかし、移転先までは上尾駅から徒歩約40分、最最寄りのJR北上尾からも約20分かかります。また、計画変更に伴うパブリックコメント(意見公募)を行わないなど、市民からは「市民の意見を聞いていない」と批判の声があがっています。
「上尾の図書館を考える会」は、2年前に図書館利用者を中心に始まった移転計画見直しを求める運動を受け継ぎ、幅広い市民、団体が共同する会として今年7月に発足しました。
会は、市の計画について「図書館が遠くなり、車に乗れない高齢者や子どもは使いづらくなる」と指摘。また、複合施設化によって現図書館より専有面積が14%狭くなることや移転費用が約38億円かかり、さらに膨らむ可能性があることなどの問題点をあげています。
会が8月26日から始めたタウンミーティングはすでに5地域で実施。あと5カ所程度で開催する予定で、議論の内容は、今月24日に上尾コミュニティーセンターで開く、「住民投票条例の制定をめざす出発の集い」に集約されます。
3日、富士見団地集会所で開かれたタウンミーティングには約40人が参加。「図書館は市民が一番身近に使う、憩いの場。使いやすい市の中心部に置くべきだ」「上から押しつけられ、建物だけがきれいな図書館ではなく、市民がつくる図書館にしたい。住民投票はみんなで考える機会になる」などと意見交換しました。
共同広がる
市民と党派・会派を超えた市議との共同も広がっています。6月議会に、会の準備会が約3300人分の署名とともに提出した移転計画の凍結・再検討を求める請願は、日本共産党、民進党、保守系含む無所属の12人が賛成しました。請願は反対17(無所属、公明党)で不採択になましたが、保守系会派を離れて賛成に回る市議もいました。
請願に賛成した市議はタウンミーティングにも参加し、市民の疑問に答え、市議会で図書館問題を質問するなど運動との連携を進めています。
日本共産党の糟谷珠紀市議団長は「上尾市は『市民とともに歩む図書館』を基本理念に掲げながら、これまで利用者説明会を1回開いたのみで、市民・利用者から直接声を聞く公聴会を一切開こうとしません。市長マニフェストだからと市民の願いを無視した進め方に市民の怒りが広がっているのは当然のことです。議員団は市民とともに図書館のあり方、税金の使い方も含めた市民参加のまちづくりを進めていきます」と話しています。
(2016年9月10日付「しんぶん赤旗」より)