埼玉県越谷市が高齢者の銭湯入浴サービス「いきいきセントー」事業を今年度いっぱいで廃止しようとしています。利用者や銭湯経営者らが「地域のコミュニティーの場を奪うな」と存続運動を起こしています。日本共産党も応援に立ち上がりました。(埼玉県・川嶋猛)
この事業は、市内在住の65歳以上の高齢者を対象に、市内3カ所の銭湯を週1回、2~2時間半無料で利用できます。他の自治体で見られる「風呂がない人」「1人暮らし」などの条件はありません。2003年度に始まり、高齢者の健康増進や交流の場づくりに役だってきました。
営業にも痛手
しかし市は「利用者が一部の人に偏っている」「浴室のある老人福祉センターの4カ所目が開所する」などを理由に今年7月、事業の廃止を発表しました。廃止の発表に、利用者からは「裸のつきあいができて楽しみにしていたのに」「毎週でなくても、少しの料金を払ってもいいので続けてほしい」など存続を求める声があがりました。
同市の銭湯「登龍湯」の経営者、関根正治さん(59)は「みなさん楽しみに来ているのに廃止はもったいない。引きこもり防止になり、『あの人は元気?』などとやりとりする場にもなっています。銭湯での保健師による健康相談もあり、市の地域包括支援センターとの協定で高齢者の異常を見つけるのにも貢献しています」と事業の意義を訴えます。
事業は数が減っている銭湯の経営を支援する側面もあり、「廃止になれば営業を続けられないというところもあります。うちも痛手です」と関根さん。
共産党も共同
日本共産党市議団と市委員会は、存続を求める声に応えて事業継続を求める署名を始めました。11月末までに1207人分を市に提出しました。
11月27日には、利用者や銭湯経営者を交えた懇談会を開催。「お風呂に入るだけではない。大事な情報交換の場になっている」「(市が廃止理由にしている)老人福祉センターが遠い人はいけない。利用が偏るというが広報不足も原因ではないのか」など意見を交わしました。
この日、懇談会参加者は高橋努市長に面会して事業存続を求めました。市長は廃止方針を撤回しませんでしたが、懇談会参加者と共産党は「力を合わせて署名をさらに広げ、市長の姿勢を変えさせよう」と運動を続けています。
(しんぶん赤旗2015年12月19日付より)