20代 月24万円は必要
労働者の4割が非正規雇用で働く埼玉県。県の最低賃金は時給845円で、県内でパートやアルバイトで働く人の平均時給は963円(2016年4月・埼玉県労働組合連合会《埼労連》調査)です。これらは、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ができる賃金なのか、埼労連が実施した「最低生計費試算調査」の結果から考えました。
調査は2016年1月から、生活実態や持ち物などを聞くアンケートを埼労連組合員など3000人に配布し、597人が回答。居住地域を、さいたま市とし、価格調査も実施した上で四つのモデル世帯を設定して各世代・世帯別の最低生計費について集計・試算しました。
時給だと約1400円
これによると、1人暮らしの20代の若者が、きちんとした生活をするためには「月収約24万円(税や社会保険料など込み・時給約1400円が必要いとの結果が出ました。県の最賃との差は500円以上あり、大きな隔たりがあります。
埼労連幹事の加藤靖さん「埼玉の最賃845円という数字は、仮にフルタイムで働いても1日7000円弱、月給15~16万円で、手取りは12万円弱にしかなりません。単身の人が県内で家を借りて、生活を維持できる水準ではありません」と指摘します。
埼労連の調査では、それぞれ子どもが2人いる4人世帯で必要な月収は、30代夫婦は約50万円、40代夫婦は約54万円、50代夫婦は約68万円との結果が出ました。子どもが生まれると支出が急激に増えて共働きをしないと生活が成り立たず、子どもが大学生になると学費などの支出がさらに増え、奨学金などに頼らざるをえなくなります。
「最低限度」とは
加藤さんは調査結果について、「『最低生計費』とは、ギリギリの生活ができればいい、食べて寝る所があればいいというわけではなく、月に1~2回は飲み会や会食に行ったり、2カ月に1回は日帰りの行楽に出かけたりと、社会人として『書通の生活』ができるために必要なお金です。今の最低賃金は憲法25条が保障する生活を営むだけの水準にはなっていません」と話しています。
「月収24万円といったら、残業や夜勤をたくさんやって、やっとそれぐらいいくかなという数字です」。こう話すのは、県内で介護福祉士として働く女性(25)です。「サービス残業もあるし、休日に行事などがあれば、無給で参加することもある。一生懸命働いているのに、それに見合った給料がもらえているのかなと考えてしまいます。普通に8時間働けば、24万円もらえたらいいのに」と語ります。
県内のNPO法人で働く杉本悠さん(32)は「シェアハウスで1人暮らしをしていた時は、一応生活はできていたけど、趣味にお金を使うような余裕はなかった。月収24万円なら、もう少し旅行に出かけることなどもできたのかなと思います」と言います。一方で、「給料や最低賃金は上がってほしいけど、小さい企業などは厳しいのでは」と話します。
日本共産党の柳下礼子県議団長は「人間として働くということは、所得保障と生きがいという両面をもっていますが、埼玉の最低賃金は低すぎます。国は中小企業に支援策を講じて、賃金をベースアップすることが求められます。県としては、若者が気軽に相談できる、SNSによる労働相談の実施が実現しました。教育や住宅も含めた生活保障策の充実などを、引き続き求めていきます」と語っています。
(「しんぶん赤旗」5月30日付より)