埼玉県議会本会議で27日、県消防防災へリコプターで救助された登山者から手数料を徴収する防災へリ有料化条例案が自民党、公明党などの賛成多数で可決されました。日本共産党、民進党、県民会議は反対しました。
条例案は、自民党が提出したもの。防災へリ有料化条例は、全国で初めてです。
反対討論で共産党の村岡正嗣県議は、埼玉県の山では「道迷い」によるか遭難が多く、標識や登山道の整備、登山者に対する注意喚起などこそが現実的な遭難防止策だと述べ、へリ救助の有料化で、無謀な登山が減少する」とした条例案の説明について「本県の遭難実態からも登山者心理からもかけ離れている」と批判しました。
村岡氏は「受益者負担が当然」との主張にも「なぜ山だけ手数料を微収するのか、なぜ埼玉県だけ有料なのか、憲法が掲げる法の下の平等に反する」と指摘。「消防法の目的は傷病者の搬送を適切に行うとしているが、有料化で救助の要請を躊躇(ちゅうちょ)するようなことになれば消防の根幹を揺るがす。有料化で山岳遭難を抑止できるとの発想は短絡的だ」と訴えました。
実効ある防止策を
防災ヘリの有料化によりさまざまな問題が起こることが懸念されます。
山岳事故が起きた場合、なるべく早く医療機関に搬送する必要があります。しかし、有料化で救助要請をためらえば、深刻な事態に至る可能性も否定できません。有料か無料かは、山岳地域かどうか、登山者か否かで変わってきます。判別は難しく、そのつけは現場が負うことになります。本来の業務とは関係ない手数料の徴収により、現場に負担と混乱をもたらすことも考えられます。
地域への影響も無視できません。小鹿野町議会は採択された意見書で「地域の重要な観光資源である登山客の減少などの悪影響をもたらす恐れがあり」幅広い関係者からの意見聴取、近隣都県の動向等調査し、慎重に審議」を求めました。秩父山岳連盟や秩父観光協会も反対しました。
埼玉の山は、首都圏の登山者が手軽に山を楽しめる場です。提案者の自民党が実施したアンケートでも反対意見が多数でした。にもかかわらず強引に条例案を押し通した責任は重大で、山岳スポーツ振興の足を引っ張る行為です。
日本共産党の村岡正嗣県議は反対討論で「登山道の整備、気象や山の情報提供、安全教育など山岳スポーツの環境整備によって遭難防止を図ることこそ、行政の責任」と主張しました。条例の問題点を広く知らせるとともに、山岳遭難を減らす実効ある施策を進めることが求められます。
(青山俊明)
(「しんぶん赤旗」3月30日付より)