今年開館20周年を迎えた埼玉県平和資料館は、現在大規模なリニューアルのため休館中で、10月半ばにオープン予定となっています。同館の現状と課題について、埼玉県平和委員会の二橋元長事務局長に聞きました。(埼玉県・藤中陽美)
埼玉県平和委員会事務局長 二橋元長さんに聞く
埼玉県平和資料館は、「平和のための埼玉の戦争展」(1984年初開催)など平和を願う多くの県民の声や運動を背景に、1993年8月にオープンした全国的にも数少ない県立の平和資料館です。県民の平和への思いが詰まった宝ともいうべき施設です。
管理の一部を民間委託
しかし、今年4月1日から、管理の一部が指定管理者のもとに置かれ、民間委託されました。あわせていま、開館20年を記念したリニューアル工事や展示替えを理由に、10月半ばまで休館となっています。
問題は、リニューアル工事や展示替えの内容を、県が県民には一切説明していないことです。上田清司知事が「PKO活動やJICAとか、青年海外協力隊の活動などの平和創造活動の展示もやられるべきだ」(知事会見・2012年10月17日)と公言したこともあり、県民の間に、自衛隊の海外での活動を「戦後日本の平和国際貢献」などとする展示が行われるのではとの危惧も広がっています。
運営協を一方的廃止に
今回のリニューアル工事、展示替えは、計画段階に専門家の意見を取り入れることも、県民の声を反映させるための公聴会やパブリック・コメントも実施していません。
そればかりか、開館以来、館長の諮問機関として、学識経験者や戦争体験者をはじめ県内各分野から選出された委員で構成する運営協議会(14人)を6月末には一方的に廃止し、わずか7人の委員によるアドバイザリーボードに改編してしまいました。
上田知事は2006年6月の埼玉県議会で、「慰安婦はいたが、従軍慰安婦はいなかった」「平和資料館の年表を見ても、間違った記述があるので修正しなくてはいけない」と述べました。
この知事発言後の2007年11月、同館入り口にある「昭和史年表」では、1991年(平成3年)の従軍慰安婦問題など日本の戦争責任論多発」の表記から「従軍」の文字が削られ、「戦時中の『慰安婦』問題など…」と、変更されてしまったのです。
知事意向で展示変更も
専門家のアドバイスも受けず、知事の意向をそんたくして、庁内だけで展示内容が変更されるようでは、知事が変わるたびに展示内容が変えられることにもなりかねません。埼玉県平和資料館の設立趣旨である「県民に戦争の悲惨さおよび平和の尊さを伝えることにより、県民の平和に対する意識の高揚を図り、もって平和な社会の発展に寄与する」が損なわれる恐れがあり、見過ごせません。
私たちはいま、埼玉県平和資料館の充実・発展をめざしてリニューアルや展示替えの進捗(しんちょく)状況を情報公開し、公聴会やパブリック・コメントを実施することなどを求めて、署名や「一言ハガキ運動」に取り組んでいます。ご支援・ご協力を心からよびかけます。
(赤旗2013年8月28日付より)