埼玉県知事選は23日告示(8月9日投票)されます。5人が立候補を表明していますが、事実上、「民主県政の会」の柴田やすひこ氏=無所属新、日本共産党推薦=と4選をねらう上田清司氏=無所属現=、自民党県連が推薦する元総務官僚の塚田佳祐氏=無所属新=の三つどもえのたたかいです。
問われる歴史観
知事選は、戦争法案が安倍政権と自公与党によって衆院で強行可決(16日)され、国民の批判が全国で沸き起こるなかで告示を迎えます。また、被爆・終戦70年の節目を前に、戦争と平和、憲法、歴史認識など、各候補の姿勢も問われます。
上田氏は、県議会6月定例会で戦争法案の認識を問われ「結論めいたことを述べるのは差し控えたい」と回避する無責任な態度をとりました。しかし、上田氏は「9条はおかしな条文。自衛隊は戦力でしょう。きちっと改正すべきだ」(定例会見13年4月)と述べるなど9条改憲が持論。集団的自衛権についても「権利はあるけど使えないというのは法理論的におかしい」(同14年4月)という立場で、「戦争する国づくり」に向かう安倍政権と同じ憲法観の持ち主です。
一方、塚田氏は「(戦力不保持を定めた)憲法9条2項を改正しない改正は拍子抜け」「防衛費GDP1%は異常に低すぎる」(フェイスブック)と憲法9条改定による軍拡を主張しています。
知事の姿勢反映
13年9月、県議会の自民党などが、意に沿わない歴に教科書を選定した県立高校の校長を議会文教委員会に呼びつけるという問題が起きました。同年12月には、県立高校の台湾修学旅行の学習内容に介入し、生徒の感想文を提出させました。
自民党などを増長させた背景に、自身の偏った歴史認識を教育現場に押しつける上田氏の姿勢があります。1期目の04年12月には侵略戦争を肯定・美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長を教育委員に任命し、教科書選定に圧力をかけ、2期目の09年7月には「国旗や国歌が嫌いな教員が辞めるしかない」と議会答弁するなど、教育現場への政治介入を強めてきました。
元立教大学教授の藤田昌士さんは「上田知事は『つくる会』系の教科書を持ち上げ、教科書採択などに介入してきました。半面、埼玉県の公立小・中学校教員1人あたり児童生徒数は、13年5月時点で、小学校が全国最大、中学校が全国で4番目というように、低い水準に置かれています。本来、少人数学級など教育条件整備にこそ責任を持つべき行政のあり方に照らして、上田県政は逆立ちしているといわなければなりません」と指摘します。
小中学校の教員を23年間務めた柴田氏は「子どもたちを戦場に送らない」が信条。知事選では「戦争法案阻止」を前面に掲げています。「教育行政に求められるのは管理や統制ではなく条件整備だ」として、小中学校全学年での35人学級実施や給付制奨学金制度の創設などを公約に掲げています。(つづく)
(しんぶん赤旗2015年7月21日付より)