「保育園のことで頭がいっぱいで落ち着いて子育てができない」「10ヵ所希望を書いたのに、すべて不承諾だった」―さいたま市では今年も希望した認可保育所には入れないケースが続出しました。認可保育所入所の不承諾通知を受け取った保護者らは、昨年に続いて市に対し行政不服審査請求に踏み切りました。(埼玉県・藤中陽美)
同市で今年4月からの認可保育所入所の1次選考で不承諾となった数は申込者5644人中4割近い2155人と過去最多になりました。浦和区や南区では2人に1人が不承諾となっています。
今年、市に提出された審査請求書は10通。3月20日には、「さいたま・保育園のことを考える親の会」が集団で不服審査請求を行いました。
参加した母親らは「不承諾通知を受け取って、これからどうしようという気持ちになった」「無認可施設も見学したけど、園庭がなかったりマンションの一室のようなところに子どもがたくさんいたり、認可保育所とは全然違う」など実態や思いを語りました。
諦めることも多い
審査請求を行った母親ら以外にも、当日は「認可保育所を増やしてほしい」と願う父母らが多く参加しました。
その一人、小柴さんは、スーパーのパート定員として週4日働きながら、2歳の娘を育てています。現在、認可保育所の一時保育を利用しています。一時保育を利用できるのは週3日程度。保育所の都合で一時保育だけ長期間休みになることもあり、約2週間、娘を実家に預けながら仕事に行ったこともあるといいます。
職場からは「もっと勤務日数を増やしてほしい」と言われています。「私も認可保育所に預けられるなら、もっと働きたい。希望通りに預けられないことで、諦めないといけないことがたくさんあるんです」。訴える声は切実です。
認可保育所入所の決定は、「保育所入所選考基準表」をもとに、市が申込者に点数をつけて審査します。両親の就労状況や現在の保育状況など細かい項目に分かれ、核家族で両親がフルタイムで共働きであれば点数は高くなります。
しかし、特に子育て世代が多い浦和区や南区では、点数の高さだけでは入所が難しいのが現状だと、さいたま市保育園保護者連絡会の渋谷次郎会長は話します。
「親たちは子どもの状況やそれぞれの園の特色などを考えて保育園を選びたいと思っています。しかし、保育園の絶対数が少なくて思い通りに行かず、悩んでいます」
大幅増設が急務
認可保育所の大幅な増設は急務です。
昨年、親たちが行った審査請求も受けて、清水勇人市長は、2016年度末までに認可保育所の定数を3600人増やす方針を決めました。
また、昨年12月から保護者の保育相談に応じる「保育コンシェルジュ」を各区に配置しました。しかし、認可保育所に入れなかった保護者には無認可施設などを紹介するだけで、根本的な解決にはなっていません。
日本共産党の、もりや千津子市議は「さいたま市の認可保育所の定数は政令市で最低水準。今すでに認可保育所には入れない人が2000人以上いるのに、市の目標は低すぎます」と指摘します。
共産党市議団は、不承諾数を基準とした認可保育所の大幅増設を主張し、2月には保育所建設補助の増額などを盛り込んだ予算組み替えを市に提案しています。
もりや市議は「お父さん、お母さんたちは『入れればどこでもいい』というわけではありません。もっと思い切った認可保育所の増設と保育現場で働く人の処遇改善が求められます」と話しています。(赤旗2014円4月27日付より)