●注目裁判 「表現の自由」問う 「九条俳句」訴訟 公共施設の「中立」って?

学習の自由や表現の自由と社会教育について議論したシンポジウム=19日、さいたま市

「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句が、さいたま市の公民館報への掲載を拒否され、俳句の作者が、同市をさいたま地裁に訴えています。この裁判は、当地の公共施設で起きている「政治的中立」を口実にした表現への干渉や、社会教育のあり方などを問う裁判として注目されています。(埼玉県・川嶋猛)

「梅雨空に~」の句は、さいたま市三橋公民館の俳句サークル会員の女性(76)が詠んだもの。同館では、会員が選んだ秀句を毎月の「公民館だよリ」に掲載していました。しかし、この句は、集団的自衛権行使容認をめぐる議論を念頭に、「世論を二分するようなテーマの俳句は載せられない」として、館が2014年6月、掲載を拒否しました。

女性は「憲法が保障した表現の自由や教育を受ける権利が侵害されている」などとして15年6月、同市を相手に俳句の掲載を求める裁判を起こしました。

掲載拒否に対する批判や掲載を求める声は全国に広がりました。しかし、館側は、根拠法令などを示さないまま「公民館だよりは、公平中立の立場であるべき」との理出で不掲載を撤回せず、裁判でも同様の主張をしています。

清水勇人市長も「(不掲載の)判断はおおむね適正だった」との姿勢です。

裁判は、多くの市民や社会教育の専門家が支援しています。

1月の第9回口頭弁論では、佐藤一子東京大学各誉教授が意見陳述し「市と市教委は公民館だよりから『九条』という表現を排除し、市民の学習の自由、表現の自由を侵害した」と指摘。全国の公民館や公立図書館・博物館の運営にも誤った判断をもたらすとして、俳句を掲載すべきだと主張しました。

さらに、市民の学習成果の発信や地域住民との情報交流の場になっている公民館だよりの役割を強調。全国の10館ほどの公民館から聞き取り調査し、俳句などの文芸作品に館側が干渉する事例はなかったと訴えました。

3月19日には、「学習・表現の自由と社会教育」をテーマにしたシンポジウムが、さいたま市で開かれ、裁判に「専門家意見書」を提出した憲法学、教育法学、社会教育学などの学識者が出席。公民館が俳句の内容に介入したことどの違憲性などを指摘しました。

裁判の意義について、佐藤氏は「学習の自由、表現の自由を保障する『公の施設』としての公民館の公平・中立性のあり方を問う裁判です。判決結果は全国の公民館に影響を与えるので、何としても勝訴したい」と話しています。

作者の女性は「漠然と『おかしい』という感覚から始めた裁判でしたが、回を重ねて自分も学び、行政が違法を行ったことが分かってきました。証人尋問で(館長らは)自分たちの仕事についてよく分かっていないと感じました。いいかげんなことで俳句に立ち入ったことは許せません」と言います。

裁判は、これまで10回の口頭弁論が開かれ、当時の公民館長らの証人尋問などが行われました。4月28日は、作者本人が証人に立ちます。

(「しんぶん赤旗」3月30日付より)

●防災ヘリ有料化可決 共産党など反対「遭難抑止できぬ」 埼玉県議会

埼玉県議会本会議で27日、県消防防災へリコプターで救助された登山者から手数料を徴収する防災へリ有料化条例案が自民党、公明党などの賛成多数で可決されました。日本共産党、民進党、県民会議は反対しました。

条例案は、自民党が提出したもの。防災へリ有料化条例は、全国で初めてです。

反対討論で共産党の村岡正嗣県議は、埼玉県の山では「道迷い」によるか遭難が多く、標識や登山道の整備、登山者に対する注意喚起などこそが現実的な遭難防止策だと述べ、へリ救助の有料化で、無謀な登山が減少する」とした条例案の説明について「本県の遭難実態からも登山者心理からもかけ離れている」と批判しました。

村岡氏は「受益者負担が当然」との主張にも「なぜ山だけ手数料を微収するのか、なぜ埼玉県だけ有料なのか、憲法が掲げる法の下の平等に反する」と指摘。「消防法の目的は傷病者の搬送を適切に行うとしているが、有料化で救助の要請を躊躇(ちゅうちょ)するようなことになれば消防の根幹を揺るがす。有料化で山岳遭難を抑止できるとの発想は短絡的だ」と訴えました。

実効ある防止策を

防災ヘリの有料化によりさまざまな問題が起こることが懸念されます。

山岳事故が起きた場合、なるべく早く医療機関に搬送する必要があります。しかし、有料化で救助要請をためらえば、深刻な事態に至る可能性も否定できません。有料か無料かは、山岳地域かどうか、登山者か否かで変わってきます。判別は難しく、そのつけは現場が負うことになります。本来の業務とは関係ない手数料の徴収により、現場に負担と混乱をもたらすことも考えられます。

地域への影響も無視できません。小鹿野町議会は採択された意見書で「地域の重要な観光資源である登山客の減少などの悪影響をもたらす恐れがあり」幅広い関係者からの意見聴取、近隣都県の動向等調査し、慎重に審議」を求めました。秩父山岳連盟や秩父観光協会も反対しました。

埼玉の山は、首都圏の登山者が手軽に山を楽しめる場です。提案者の自民党が実施したアンケートでも反対意見が多数でした。にもかかわらず強引に条例案を押し通した責任は重大で、山岳スポーツ振興の足を引っ張る行為です。

日本共産党の村岡正嗣県議は反対討論で「登山道の整備、気象や山の情報提供、安全教育など山岳スポーツの環境整備によって遭難防止を図ることこそ、行政の責任」と主張しました。条例の問題点を広く知らせるとともに、山岳遭難を減らす実効ある施策を進めることが求められます。

(青山俊明)

(「しんぶん赤旗」3月30日付より)

●過酷な徴税改善を求める さいたま市社保協

さいたま市社会保障推進協議会(荒川常男会長)はこのほど、市債権回収課などと懇談し、税滞納者に対する行き過ぎた徴税行為を改めるよう求めました。

懇談には、債権回収言課に滞納分の一括払いを迫られた自営業の男性が参加。できなければ差し押さえると言われ、家族や知人、銀行から借りて納税したと話しました。

男性は「職員から『本当に家族に連絡したのか確認ずるから両親、兄弟、祖父母の連絡先を教えてほしい』『本当に借り入れの申し込みをしたのか。銀行名を教えてくれ』と言われた」と告発しました。職員の口から、借り入れ先として消費者金融(ヤミ金)があがったことも明かしました。

市側は、ヤミ金から借金して納税させることや、親などの連絡先を聞き出すことは誤りだと認め「そういうことかないよう指導する」と答えました。一方で、借金して納税させることについては「延滞税がかかると税率の負担が重いため、借りて本税だけでも返済するよう案内してしいる」と述べました。

社保協は「納税のために銀行は融資しない。銀行をだませということか」と批判。自営業の男性も「納税とは言えないので仕事にかこつけて借りた」と実態を語りました。

社保協は「滞納を回収できればいいという対応ではなく、滞納者が抱えた問題を一緒に解決する立場に立ってほしい」と求めました。

(「しんぶん赤旗」3月29日付より)

●俳句掲載拒否問題でシンポ 行政は内面関与やめよ さいたま市

 

さいたま市で公民館の俳句会員が詠んだ「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の句が、公民館だよりへの掲載を拒否された問題を受けて、学習・表現の自由と社会教育について考えるシンポジウムが19日、開かれ、200人が参加しました。埼玉社会教育研究会(代表・安藤聡彦埼玉大学教授)の主催。

「梅雨空に~」の俳句は「公平中立」の立場で問題があるとして公民館だよりに掲載を拒否されました。これについて右崎正博獨協大学法科大学院教授は、俳句の内容を理由にした掲載拒否だと指摘し、「表現の自由が制限されるには厳格な基準での審査が必要だが、それがなければ違憲だ」と述べました。

堀尾輝久東京大学名誉教授は、社会教育行改は学ぶ権利を保障する責任があると強調。「中立」は行政に対しで求められるもので、行政は、個人の内面に関与してほならないと語りました。

長澤成次千葉大学教授は、地域住民の学習確を保障する公民館だよりの役割を語り、「市の広報とは違い、(市民が)自由に意見を言うことができるものだ」と指摘しました。

シンポジウムの2部では、美術館の展示内容の変更圧力や公民館の使用許可取り消しなど、公の施設を使う市民への干渉や制限が各地で相次いでいることが報告され、それに反撃する市民の取り組みも語られました。

(「しんぶん赤旗」3月28日付より)

●無駄なダム事業推進 県議会で柳下県議が予算案批判

埼玉県議会定例会は27日、2017年度当初予算案などを可決して閉会しました。

日本共産党は一般会計や水道用水供給事業会計、流域下水道事業会計予算案などに反対しました。討論で柳下礼子県議は、予算案について▽八ツ場(やんば)ダムなど無駄な公共事業を推進している▽乳幼児医療費など県単独3医療費助成制度について、市町村への補助率を財政力で差別している▽農家を支援する農林部職員を減らし続けている─ことなどを批判しました。

秋山文和県議は、県5ヵ年計画案に反対討論しました。計画全体を貫いている上田清司知事の基本姿勢について、安倍政権の大企業優先、農業切り捨て政策に対抗する立場になっていないと指摘しました。

秋山氏は、高齢者福祉では、特別養護老人ホームの待機者解消などの基盤整備目標を取り下げ、要介護認定率を施策指標にしてしまったと批判。中小企業支援では「経営革新計画の承認件数」を指標にしているが、経営を支援する低利子・無担保無保証融資の件数を施策目標にすべきだと述べました。

さらに、農業施策では「農業の集約化」ばかりでは未来がなく、小規模家族経営を含めたすべての農家を視野に入れた支援をすべきだと主張。教育では、全国学力テストの平均正答率を初めて施策指標にしたと批判し、競争教育を進めるのではなく、少人数学級など教育条件の整備を急ぐべきだと主張しました。

(「しんぶん赤旗」3月28日付より)